32 名前:411@神々に囲まれて。[sage] 投稿日:04/07/07(水) 22:53 ID:6TrnvpnZ
「ストレスから来る神経痛と、やや微熱、ね。少し休めば楽になるわ。
・・・・・・それにしてもあなたたち、大丈夫?」
やよいが思わずそう口にしたのも無理はなかった。ふみつきは引っ張ってこられたせいで、
ぐったりと椅子にもたれ、ながつきはそんな彼女を心配して、目をうるませている。
「・・・・・・・まあ、いいわ。とりあえず七転さん、ベッドで休みなさいね。
申し訳んないんだけど、私ちょっと用事があるから・・・・すぐ戻ってくるようにするけれど。
九龍さん、後は頼めるかしら?」
「もちろんだ! ナナコロビは、ウォンがかならず看病する!!」
元気な声に、やよいはにっこりと笑い、「じゃあ、お願いね」と言って去っていった。
「まったく、あのクラスのやつら、いつもナナコロビに仕事押し付けてる。これじゃあ、ニーが
倒れてしまうのも無理ない」
タオルをしぼりながら、ながつきは独り文句を呟く。
ながつきの言う事は、ふみつきの想いを十二分に現してはいた。しかし、核心は突いていない。
本当にふみつきが心を悩ませている訳は、別のこと・・・・・・・先日の、ながつきの告白の事。
"ウォンは、ナナコロビが大好きだ!"
突然の告白に、その時はどうしていいのか分からなかった。
ただ、胸が熱くなって、高鳴りすぎる鼓動を抑えるのに必死で、結局返事はしていない。
返事を催促されているわけではないが、やはり心苦しかった。
そのせいか、食事もろくにのどを通らず、勉強も手につかない。
33 名前:411@すみません[sage] 投稿日:04/07/07(水) 22:54 ID:6TrnvpnZ
「はい、ナナコロビ」
ながつきが、火照る額に濡れたタオルをあてる。冷たい感触が伝わって、ふみつきはため息をついた。
ながつきといると、どうも調子が狂う。当たり前の親切を、おおげさに受けとめて、とびきり笑顔ではにかむから。
けれど、そんな純粋なながつきを、羨ましいと少し思う。
「・・・・・・・・・・九龍くん」
「? どうした、ナナコロビ」
ながつきの顔が間近に迫る。男子制服を着ていても、その顔は愛らしい少女のもの。
二重の瞳がまっすぐに見つめてきて、ふみつきの胸は鳴った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・キス、して」
「・・・・・・・・・・え?」
口をついた思わぬ言葉に、ふみつきは自分で動揺した。
「あ、いやっ・・・・・違うの、そうじゃなくて・・・・・・んっ!」
ふみつきの唇に、ながつきのそれが押し当てられた。
「ん・・・・・・・・はぁ・・・・・・っ」
軽く表面に触れるだけの口付け。しかし、吐息が触れて、体温が伝わって、どうしようもなく疼く。
「・・・・・・・・・・・・・・・・あったかい」
「・・・・・うん。・・・・・・・ナナコロビの・・・・・・すごくやわらかい」
その時突然、ふみつきの視界が開けた。
とくん、とくんと、心臓の音が聞こえるように、いつまでも見つめあう。
ただもう、他の事が考えられない。ずっと、その瞳を、照れる仕草を見ていたい、と、
ふみつきは、そう思った。
(・・・・・・・・・・この感情に名前を付けるとすれば、どうしたらいいんだろう?)
そんな事を考えていた時、また頭がぐらついた。
「な、ナナコロビ!? 大丈夫!? しっかり、ナナコロビ・・・・・・・・!)
ながつきの声が、ぼんやりと聞こえる。閉じていく瞳の中で、
「・・・・・・・・・・・・・・・大好き、だよ」
そっと呟いて、ふみつきは目を閉じた。
おわり