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  1. 名無しさん@閑古鳥 --/--/--(--) --:--:--
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HAPPY☆LESSON~ uzuki SS for 2ch ~

  1. 名無しさん@閑古鳥 2003/09/16(火) 22:52:36
    251 名前:サロンうづきスレの114[sage] 投稿日:03/09/16(火) 22:52 ID:vAhtQjVT
    チトセ×うづきのSSです。ちょい長くなったんで無料HPとってuぷしますた。
    ストーリーらしきものはありますが、萌えない、エロ少ない、暗い、という感じで、
    しかも内容はかなり人を選ぶSSになりました。。。
    キタ━(゚∀゚)━!! って感じも(;´Д`)ハァハァ って感じも全然ないSSですが、
    (どっちかというとガ━(゚Д゚;)━ン って感じ)寂れて来たエロパロ板の肥やし
    にでもなれば良いでつ。

    http://work2ch.hp.infoseek.co.jp/uzuki_2chss.htm





    HAPPY☆LESSON
    ~ uzuki SS for 2ch ~



     その日もいつもと変わらない朝の光景だった。
     ママ達による盛大で華やかな、チトセの学校への送り出し。5人のママが一斉にチトセにそれぞれの言葉を告げる。チトセは鬱陶しそうに後ろ向きにママ達に手を振った。一人一人の言葉なんてもう聞いてられない。
     玄関を出てヘッドフォンを耳にあてる。瞬間、
    (……トセくん、…チトセくん)
     かすかに自分を呼ぶ声が聞こえたと思った時、―――ふわりと甘い空気に包まれる。うづきがチトセの背中に後ろから抱き付いた。彼女の―――ひかえめながらも充分に柔らかく弾力のある胸がチトセの背中で弾んだ。驚いたチトセがヘッドフォンを外して怒鳴る。
    「な、何するんだよ!? びっくりするじゃないか!」
     赤面しそうになるのをなんとか堪えるが、心臓は激しくドキドキしていた。
    「呼んでるのに、ヘッドフォンなんかしてるからだよ」
     そう言ってうづきは「はいっ」と、チトセに折りたたみの小さな傘を渡した。
    「まだ梅雨が明けてないでしょ。空を見なよ。いつでも雨が降りそうな感じだし」
     ―――確かに。空は朝から暗く重い灰色をし、空気も湿気を多く含んでいて、いかにも雨が降りそうな雰囲気である。チトセはうづきに手渡された傘を見た。彼女の趣味らしい、ピンクの柄に可愛い猫の絵が描かれた傘だった。一瞬何かを言おうとして口を開けるが、チトセの顔を覗き込んでいるうづきの無邪気な笑顔を見て、そのまま何も言わず傘を鞄に仕舞った。
     何も変わらない日常。表面上はそう見えていた。しかしチトセの心の中ではあきらかに、何かが変わりつつあった。



     ママ達が来てから確実に自慰の回数が増えた、とチトセは思っていた。家の中はいつも甘酸っぱい女性特有の匂いが充満し、脱衣場には脱ぎっぱなしの衣類や下着なども無防備に散乱し、否応なしにも「女」というものを意識せずにはいられない環境になったからだ。今までは自分の女性に対する煩悩の割合はそれほど大きくないと思っていた。グラビア雑誌やアダルトビデオなどに熱をあげ、だらしなく興奮する同年代の男達を、心のどこかで軽蔑さえしていた。
     それが今は…………。
     文芸部の幽霊部員でママ達よりも早く帰宅するチトセはそのままママ達の部屋へ向かう。最初は誰もいないからといってもママ達の部屋(元は自分の部屋だが)に入るのもためらわれたが、今は学校から帰ってくれば、甘い背徳感に誘われるようにママ達の部屋に入り、誰も帰って来ないうちに自慰を繰り返すようになった。5人のママのうち、誰の部屋でその行為をするかはその日の気まぐれだ。例えば朝に見たやよいママの優しい笑顔が妙に脳裏から離れなかった時は、やよいママの部屋に入り、さつきママの健康的で躍動感溢れる肢体に見とれてしまった時は、さつきママの部屋に入る。そしてその日はうづきママの部屋に入った。理由はただ、今朝うしろから抱きつかれた時の感触が妙に背中に残ってしまったからだ。
     チトセはうづきママが毎日使っているベットに上がりうつ伏せになる。うづきママの匂いが身体を包む。歓喜と倒錯感が入り混じり切なくなるほど胸を打つ心臓を押さえながら、そのうづきママの匂いを体中に染み入らせるかのように、ゆっくり大きく深呼吸をして目を瞑り、妄想に更ける。ママ達はいつも平気でバスタオル一枚やカッターシャツだけで家の中をうろつき回る。だからママ達の悩ましい姿を想像するのは安易なことだった。むしろそれは、イヤでも脳裏にこびり付いて離れなくなっている。今日はうづきママがコスプレの着替えを手伝って欲しいと言った時のことを思い出していた。上半身裸で胸を衣装で隠したうづきママ。彼女に言われるがまま、後ろからファスナーを上げるのを手伝った時の、その美しい腰から背中、首筋、うなじまでのラインは息を飲んで見とれるくらいだった。そして着替えたあとの子供のように無邪気に踊り、そのミニスカートから覗く白い下着。その下着の場面を何度も脳内で反芻して、指で上からなぞるところを妄想しながら、チトセはズボンを下ろしゆっくりと指を動かす。イきそうになっては止め、またイきそうになっては止めて、何度も絶頂寸前の感覚を楽しんだ。荒い息使いの合間に軽く声が漏れる。その時だ。
    「何? いるのチトセくん?」
     部屋の扉が開いた。びくりとして、チトセはベットから転げ落ちて、とっさに開かれたドアに目をやる。
     可愛い羽が生えたスリッパが見えた。視線を上げると―――うづきママが絶句した表情でチトセを見下ろしていた。



     何をどうしてそうなったかは解らない。よくあるオナニーを姉や母に見られ衝動的にレイプしてしまった、などという体験談はただのアダルト雑誌のお決まりのやらせ投稿だと思っていた。―――が、その時チトセはそれと同じような行為に及ぶ結果となった。ベットから転げ落ち、とっさに立ち上がろうとしたチトセは下ろしたままのズボンに足がもつれ、うづきを押し倒すように床に押さえつける形になってしまったのだ。オナニーをしていたことは弁解する気はなかったが、こういうふうにまるで襲い掛かるかのように覆い被さってしまった時、もう今の状況を取り繕う気も失せてしまった。いや、本物のうづきの感触に理性が飛んだせいかもしれない。そして、ただ「うづきママをレイプするしかない。レイプすることによって同じ秘密を共有する関係にするしかない」と自分勝手な自己正当を脳内で繰り返した。うづきの両腕を押さえつけて、有無を言わさず唇を奪おうとする。うづきは首をふって抵抗した。
    「やめて! やめてよ! チトセくん!!」
     金切り声が部屋中に響いた。うづきは必死に身をよじって上に乗ったチトセを振り払おうと足をバタバタさせる。だがそれによってチトセの下半身が擦られて、チトセの興奮をより高める結果となっていた。
    「やめてよ! ほんとにやめてよ!」
    「好きだ、うづきママ」
     苦し紛れの咄嗟に出た台詞。ただの今のレイプを正当化するだけの都合のいい言葉だったかもしれないが、言った瞬間チトセはそれは自分の本心であるような錯覚がした。
    「本気で好きなんだ、うづきママが!」
    「好きだからってママにこんなことするのは変だよ! あたしはママだよ、チトセくんは息子だよ!」
    「くだらない! 言葉でどう定義したってうづきママは魅力的な一人の女性で、俺はうづきマ―――うづきと、少ししか年が離れてないただの高校生だ!」
    「あたしは、チトセくんを本気で大切な息子として見ていたんだよ!」
     彼女の眼差しは真剣だった。チトセを痛いくらい真剣にその瞳に映していた。
    「だから息子とこんなこと―――考えられないよ!」
     恋愛の対象として――― 一人の男としてチトセを見る気はない。うづきの台詞にそう感じたチトセは悔しさともとれる憤りを感じた。
    (少しも男として見られてなかったのか俺は!?)
    「離して! 離してよ!」
     うづきが腕に力を入れて、なんとか逃れようとする。
    「なんだよ、それは。―――じゃあ、じゃあ俺は、俺のこの気持ちはどうなるんだよ!」
     チトセは乱暴にうづきの顎を押さえつけて唇に吸い付こうとした。瞬間、うづきは自由になった方の腕を振り回した。
     !
     彼女自信狙ったわけではないが、肘がチトセの眉間を直撃した。急所を打たれたチトセに目の前がふっと暗くなる感覚が襲う。うづきがチトセを押しのけて走り出す。意識が落ちたのは一瞬だったと思うが、気付いた時は既に玄関のドアが大きな音をたてて閉まったあと―――うづきが外まで逃げたあとだった。
     遠ざかっていく靴の音を聞きながら、
    (やってしまったか……)
     そうチトセは思った。いつかはママ達の誰かを自分の欲情の赴くままにむちゃくちゃにするんでは、という予感はずっと前からあったからだ。
    (ついにやってしまったんだ……)
     もう一度繰り返す。いつもの妄想ではない、さっきまでのは現実の行為だと自分自信に納得させる為に……。
     恐ろしいくらいの罪悪感はあった。だが、いやがるうづきを押さえつけた時の―――自分がまるで弱った小動物を見た途端襲いかかる肉食獣になったかのような感覚は、チトセの体内である種の欲望を目覚めさせていた。湧き上がる感情に身体中の血液が沸騰している気分だった。
     もう止まらない。止めたくもない。一人でやる自慰なんかじゃ治まりがつくはずもない。今でもうづきを抱きしめた感触が残っている。もう一度、今度はちゃんとうづきの全てを自分のものにしたい! まるで狂おしい恋に落ちたかのようにそう思った。いや、これはもう恋だ。チトセには既に他の誰でもない、うづきしか見えてなかった。うづきを抱きしめたい。うづきにキスしたい。うづきと淫靡で倒錯したイヤらしいセックスに溺れ、自分が持っている暗部の全てをぶつけたい。身体と心が疼いて切ないくらい苦しかった。



     数時間後、うづきは他のママ達と一緒に帰宅した。もう帰って来ないのでは? と不安に思っていたチトセはほっと安堵の息をついた。うづきは他のママ達と一緒なら安心だと思ったのだろう。今日はとくに意識してさつきママにべったりくっ付いていた。そうしている間はチトセに襲われる心配はないと考えているようだった。
    「おい、どうしたお前? なんだか元気ないじゃん」
     浴室で、一緒に風呂に入っているさつきママがうづきに聞いた。今日あったことはとても言えなかった。言えるはずがなかった。いつも通り笑おうと思っても笑えない。ドア越しにチトセの影が見えた。別に風呂を覗かれるとはうづきもさつきママも思ってない。脱衣所には洗濯機もあるし、チトセが自分が溜めた洗濯物を入れに来るのはよくあることだ。いつもなら気にしなかった。だけど、うづきは風呂上り、自分が脱いだはずの衣類を確認した。彼女の今日履いていた下着がなかった。誰が持っていったかなんて考えるまでもなかった。パジャマを着て自分の部屋に行くと、やはり、チトセがベットに座って待っていた。足元にチトセが脱衣所から盗んだ彼女の下着があった。その下着に付いた白い汚濁は―――精液だった。チトセは卑屈にも見える卑しい笑顔を向けていた。うつむくうづきの顎の先端から涙がポロポロと零れ落ち絨毯に濡れた染みを作っていく。うずきの口がわずかに動く。それは絶望に満ちたような声だった。
    「な、なんでよ……、どうか、しちゃったの? チトセくんは……、こんな、こと、する子じゃ、なかった、のに―――」
     涙で溢れてもはや言葉になっていなかった。
    「あたしが―――あたしが、悪いの? あたしが、チトセくんをこんな子に、しちゃったの?」
     足が震え、崩れるようにチトセの膝にしがみつく。
    「帰って………、帰って来てよ。あたしの、大切な、大好きな、チトセくんに」
    「無理だよ」
     冷淡にそう言うと、チトセはうづきの手をとり、そしてゆっくりと自分の股間の上に持っていく。うづきはチトセの股間をズボンの上から触るような形になった。初めて触る、その熱く硬く、滾(たぎ)ったモノはうづきの手の中で、破裂しそうなくらいの勢いで何度も脈を打っていた。
    「これが今の俺の気持ちそのものだようづき。俺は男として、うづきを女として見てる。もう家族じゃない」
     モウ カゾクジャ ナイ……
     足元から今の自分の世界の全てが崩れ去ったかのような感覚。
    「家族じゃないけど、だからこそ俺はうづきを恋人にしたい。あの時も言ったけど、俺は本気でうづきを愛してる。だからうづきも俺のことを愛して欲しい」
     その言葉は少しは慰めになっただろうか? だけど、黙ってうつむいた彼女の口から漏れたのは、―――「ダメだよ」という拒絶だった。
    「私も、―――私もチトセくんが好きだよ。ほんとにほんとにほんとに好きだよ。だけど―――私がチトセくんを一番好きでいられるのは、私がママで、あなたが息子だった、そういう関係でいられた時だから、―――だから」
     うづきが顔を上げた。涙で濡れたぐしゃぐしゃな顔だった。
    「だから、私はチトセくんの想いを受け入れることは、できないよ。今日のことは忘れて、明日からまたみんなで楽しく、暮らそうよ、ね?」
    「もう無理だって言ったじゃないか!」
     怒りを押し殺したような声でうづきに言う。
    「仮に今までの生活をまたやっても、俺にとっちゃ地獄でしかないよ。大好きなうづきがこんなにも近くにいながら、ただの息子として振舞っていくしかないなんて、そんな蛇の生殺しのような生活を俺に強制するのかよ! 残酷だよ!」
     チトセはうづきの手を引いてベットに押し倒すと唇を彼女のそれに重ねた。涙で濡れた頬と唇の味。二人の初めてのキスはそんなものだった。
    「うづき、俺と契約しよう」
    「契約?」
    「俺は他のママと一緒の時は今までのうづきの願う通りの息子として振舞うよ。だから、二人の時は―――うづきは俺の望むうづきになって欲しい」
     返事を待たず、またうづきにキスをする。拒絶する隙を与えたくなかった。よくよく考えれば他のママに黙っていることは当り前だから、まるでギブ&テイクのような申し出をすること自体がおかしなものだったが、チトセは無理矢理その言葉で誤魔化そうとした。
     小さくて柔らかくて魅力的な唇に何度もキスした。1回1回のキスで脳が痺れるくらいチトセは恍惚となっていく。彼女の上唇、下唇を交互に噛みしめたり、舌を入れて美しい小さな貝みたいな前歯を舐め回した。うづきから抵抗はない。涙目になっているその瞳には、諦めのような色が入り混じっていた。チトセは強引に舌を入れて、うづきのその小さな舌を捉えるや、ちゅぱちゅぱと音が出るくらい吸い付いた。唇を離すとお互いの唾液が水飴のように太い液状の糸を作っていた。それを舌で絡めてゆっくり味わい、ごくんと飲み込む。なめかしい味が身体に浸透していくかのようだった。更にチトセの感情は熱くなる。はだけたパジャマの襟の中央に覗く胸の谷間を舐めると、うづきはくすぐったいのか「ひゃん!」と声をあげて全身にきゅっと力を入れた。その反応に気を良くしたチトセは首筋から肩に舌を這わせながら、パジャマのボタンを外していった。ピンクの可愛いブラジャーを捲り上げると乳首が露わになる。改めてチトセはうづきを見る。きめの細かい肌。幼くみられながら、それでも細く締まった腰から胸のラインは十分にバランス良く美しいラインを描いている。見てるだけで切なくなるようなその裸体に、チトセは何度も感嘆の息をついた。
    「綺麗だ。ほんとに綺麗だようづき…。大好きだ」
     うづきは顔を真っ赤にして目をそらす。チトセを見ようとはしない。両方の腕で左右の胸をアンダーの方からゆっくりと揉む。ゴムまりのような弾力が掌を包む。
    (なんて気持ちいいんだろう)
     人差し指と親指で乳首を挟み、左右のそれを同時に弄んだ。
    「あ、い、いや、い、いや」
     我慢できずに盛れる吐息。力なく半開きになる唇の合間に、チトセはまた舌を入れる。
    「ん、ん~、ん~、あぅ、んっんっ」
     お互い舌を擦り合わせながら、チトセはうづきの股間に指を這わせる。熱く濡れたパンティからはくっきりと淫靡な女の溝が浮かび上がっていた。オナニーをしていた頃は、妄想の中で何度も指でなぞったことがあるその部分を、今は現実になぞった。下着の上からでさえ解る、うづきの小さく勃った陰核をチトセは中指で小さな弧を描くように攻めた。
    「や、やぁぁああああ~」
     敏感になっていた女の先端をしごかれて、うづきは気が変になりそうだった。そのかつて一度も感じたことのない感覚にうづきは本能的に、身をよじって抵抗を始める。
    「もう、ゆ、ゆるして、チトセくん、あたし、あた、あうん!」
     チトセがきゅっと乳首を絞り上げる。
    「あぁぁぁっ、う、うぅ、うぅぅ~ん」
     股間から流れる恥露は零れんばかりに溢れかえった。
    「うづき、もうパンティ脱いだ方がいいだろ?」
     ゆっくりとパンティを下へずらしていく。恥骨の下から縦の筋が徐々に現れる。全てを脱がし、一番恥ずかしい場所をも露わにしていくその過程に、チトセは胸のそこから歓喜が湧き出るのを感じた。チトセは成人の女性の性器を見るのは初めてだった。とても綺麗だと思った。噂にしていた「グロい」だの「汚い」などという印象は少しも受けなかった。昔子供だったみなづきと一緒にお風呂に入った時に見たそれと同じような感じがした。ささやかな茂みの下に覗く、恥露で輝く小陰唇にチトセは吸い付く。
    「きゃうん!」
     全身を眩暈にも似た快楽が駆け巡る。股にきゅっと力が入り太股でチトセの顔を締め付ける。だがチトセはその締め付けを楽しむように、敏感な部分を舌先で舐めまわす。きゅっきゅっと舌に力を入れる度にうづきの声も大きくなる。
    「ひゃ、ああ、ひゃうぅぅう~ん、ダ、ダメだよダメ!」
     本気で逃げ出そうとしたうづきの太股を押さえ付けて、もっと力強くチトセは股間に顔をうずめた。
    「も、もう、あたし、もう……ほんとに、ち、チトセくぅぅぅううん」
     うづきの足のつま先がぴんと伸びる。身体全体がびくんと脈打つ。その間さえもチトセは舌の動きを止めず、うづきの恥肉にしゃぶりつく。
    「あうん! いやぁぁぁああ~! あっあぁぁぁあぁあああぁ~~ん」
     声と共に股間から水玉が幾重も飛んだ。
     快楽の波の中で、うづきは意識が遠のくのを感じた。意識がゆっくり沈んでいく……。その中で、うづきは自分の声を聞いた。

    (怖い、怖い、怖い………)

     それはチトセがだろうか? ―――それとも自分が………?



     自分の濡らしたシーツの不快な感覚で、うづきは目を覚ました。頭がくらくらする。着ているのはパジャマの上だけの自分。風呂上りで乾かしもしなかったから、髪がぐしゃぐしゃに乱れ、汗をかいた肌に張り付いていた。股の間は既に乾いてパリパリになっていたが、クリトリスにはまだ何かに触れられているような余韻が残っていた。その余韻は息子のチトセが与えたものだ。
     彼女はあんなことをされた今でもまだチトセのことを、家族だと、息子だと思っていた。
    (そうなんだ、チトセくんは思春期で反抗期なだけなんだ。それであんなことをしたんだ)
     刹那的に虚しくなる胸を何度も押さえながらそう思いこんだ。魅力的なママに息子がくらくらするなんて普通のことなんだ、と。



     翌日からチトセは貪欲にうづきを求めた。家でも学校でも処構わず僅かな時間でも二人きりなら、チトセはうづきに強引なキスをし口内を弄び、胸や股間をまさぐった。夜は他のママが眠ったあとは、毎晩うづきの部屋に行ってうづきの身体中を隅々まで舐めまわした。中でもチトセは学校の美術室でのうづきとのそれを好んだ。運動部の掛け声や吹奏楽部のロングトーンが響く校内では多少うづきが喘ぎ声を挙げても教室の外には漏れない。夜だとどうしても他のママ達がいるため遠慮してしまうが、ここでは充分にうづきの身体を楽しむことが出来るからだ。
     今日もチトセはいつも通りうづきを放課後の美術室に連れて行き、ドアに鍵をかける。そしてうづきのスカートの中に顔を突っ込み、パンティをずらして舌を入れ、たっぷりとクンニを楽しんだ。声を殺して喘ぐうづきが可愛い。嫌がる彼女を教室の隅まで追い詰めて、壁を背にして悶えさせる。チトセは片方の足を上げさせてより自分の舌が奥まで入るようにする。
    「んッ、……ああっ、う、うぅぅぅんっ」
     快楽が増すたびに、彼女はつま先を伸ばしてチトセの舌から逃れようとする。だがしかし、身をよじればよじるほど、チトセの舌があらゆる角度で彼女の内壁を攻める。
    「あぁん! あぐぅ、んっああぁぁあん! や、やあぁん」
     だらしなく顎から糸を引く唾液もそのままに、喘ぎ声をあげる。
    「ち、チトセ、くぅぅん、も、もうダメ。あ、あぁぁあああん!」
     そして身体中を震えさせうづきが絶頂を迎える。身体の力ががくんと抜けて、腰をペタンと下ろすうづき。
    「…ハァ、ハァ、…ハァ、ハァ、もう…、許して、よ。チトセくん」
     座り込むうづきのM字に開脚しているミニスカートからからは2本の白く美しい足と、その先にある滴で零れた極部が露わになってる。チトセからはそれが丸見えだったが、うづきは絶頂を味わったばかりで頭がぼぉっとしてそれにも気付かず隠そうともしない。
    (なんてイヤらしくて愛らしい格好だろう…)
     チトセはその姿を見て舌めなずりをし、そしてまだ動けずにいる彼女の服を一枚一枚ゆっくりと剥いでいく。チトセにとって教室という場で女を裸にしていくのは一つの快感だった。厳格なはずの教育の場でこそ味わえる倒錯感と開放感。靴下と革靴以外全て脱ぎ去り、机の上に彼女を乗せて、両太股を抱えてまた陰部に吸い付く。愛液と唾液でどろどろに濡れたそこは何時間舐めても飽きない甘美な味だった。うづきが失神すれば、その後はうづきを人形のように抱きかかえて弾力のある肌を隅々まで弄ぶ。彼女の身体は何処を触っても気持ちよく、脇の下、耳の奥、背中、ヘソの周り、太股、膝、足の指先、全てを舌で舐めとりたくなる。もはやチトセの舌が触れてない場所なんてうづきの身体の何処にもなかった。



     だが、そんな生活の中でもチトセには大きな不満があった。チトセは何度もうづきに「愛してる」と繰り返して囁いている。彼女はそれを言う度に悲しい表情をし、目を逸らした。それから、うづきからチトセへの奉仕は一切なかった。いつも一方的にチトセがうづきを愛するだけだった。もちろんフェラなんてしてくれるわけもなく、苛立ったチトセはうづきの柔らかな頬に肉棒を押し付けて射精しその顔を精液で汚したことが何度もあるが、射精が終わったあといつも大きな虚しさを感じていた。そして何よりも不満なのは――――彼女はいまだ処女だった。挿入を絶対に嫌がったということだ。チトセはクンニが好きだった。うづきの綺麗な恥部にいったんクンニを始めれば、彼女が失神するまで執拗に舌で攻めた。何度も絶頂を迎えるうづきを見るのでも満足していたし、まずは彼女に性的な快楽を植え付けさせ、自分からチトセのペニスを求めてくるまでにしないと、と思っていたが、幾夜を過ぎてもうづきは明らかにチトセとの行為を嫌がっていた。無理矢理美術室へ連れて行こうとした時に、だだをこねた幼児のように泣き崩れた時もあった。彼女自信もう身体はチトセの虜になりつつあるのだが、何故だろう?  何度も夜を重ねても、何度も彼女を抱きしめても、心ががらんどうのようになっていて、関係がうまく進んでいるという実感がまるでなかった。逆に彼女のチトセを見る瞳が憐れんでいるかのように悲しいものになっていく。チトセは焦った。今の生活を手放したくない。だけどこのままだといつかうづきを永久に失ってしまうのでは? という恐怖がだんだんと心を支配していく。
    (好きなんだうづきが。本気で。うづきがいない生活なんてもう考えられない。いつでもうづきの身体の温かさを感じていたい。いつも手の届くところに彼女を置いておきたい。そして肌を合わせていたい。それが失われたら、俺はほんとに気が狂ってしまう。死んでしまうかもしれないんだ。それくらいうづきを愛しているんだ。なのになんで!? なんで彼女は俺に全てを与えようとはしない。なんで俺の愛に答えてくれない!)
     チトセの心を愛情の裏返しともいえる憎しみにも似た感情が支配する。いつかうづきは俺の前から去ってしまうだろう。それは数ヶ月後かもしれないし、突然明日かもしれない。それを考えると怖かった。怖くて怖くてどうしようもなかった。その不安が指先まで浸透して震えるようだった。自分はもっと図太い人間だと思っていたが、今はもう、うづきの存在だけに支えられているような、ろくに一人で立つことも出来ないような脆い人間になっている気がした。
    (怖い。怖い。失いたくない。だけどどうすればいいのだろう?)
     脳裏に優しい笑顔のうづきが現れた。だけどそれは何処か悲しさを我慢しているような笑顔で、それがチトセには歯痒く思えた。その姿を一瞬にして霧に包みこませるかのように、さあっと消えさせる。
    (こうなったら強引に縛り付けてでも彼女の処女を奪うしかない!)
     せめて身体だけでも自分のものに、―――そうチトセは考えた。
    (イヤというほどたっぷり時間をかけて陵辱して―――、なんなら彼女の弱みを握り締めて脅してもいい。調教して完全に性奴にして、そして絶対に俺から離れられないようにしてやる)
     それは本当に自分の為になるのか? 理性的で合理的な判断なのか? そういう疑問はなるべく考えないようにした。自分自信もう正気を保っている自信がない。ただ、うづきが欲しい。手放したくない。俺を受け入れないうづきが悪い! それだけだった。
     しかし実際に行動に出る機会がない。当り前だが自宅では他のママ達に気付かれないようにするため、どうしても大胆な行為に出ることはできない。前に本気でうづきに挿入を試みた時、彼女はなりふり構わないくらいに悲鳴をあげて嫌がり、ママ達が慌ててうづきの部屋に押し寄せた時があった。チトセは咄嗟にベットの下に隠れ、うづきもなんとか「カーテンを開いたら、大きな虫が窓に貼りついていたから、つい大声を…」と取り繕ったが、この時、ママ達がいる家ではもう強引なことは出来ないと悟った。だけど、どうしたらいい? うづきも普段からいろいろ警戒している。学校ではもっと不味い。下手をしてバレてしまえば連鎖的に俺が5人の先生と暮らしていることさえ発覚してしまう恐れすらある。
     いつ、どこで、どうすればいいのか?



     だが、その日は突然やってきた。
     ある朝うづきは軽い風邪をひいていた。昨晩チトセに何度も絶頂を与えられたあと、そのまま失神したらしい。全裸のまま迎えた朝は冷たい空気が部屋を満たしていて、気が付いた時には既に喉と頭が痛かった。熱自体は37度と少しで、別に動けないことはなかったが、その日は重要な授業があるわけでもなかったので学校は休むことにした。
     そしてチトセは、
    (チャンスだ! 今日ならこの家にはうづきしかいない!)
     思っても見なかった幸運が訪れたような、そんな感じがした。他のママ達に警戒されないように普段通り学校へは行ったが、胸が期待感で膨らみ、授業中もどううづきを陵辱するか、どういう体勢で処女を奪い、またどういう体位で射精するのが一番自分の好みなのか、後ろから胸を揉みながら? 縛りつけて上位の体勢で自分の上に乗せながら? 1回目は? 2回目は? と、そんなことばかりをたっぷりと考え耽っていた。昼食時間が始まった時、チトセは学校を早退し自宅へ向かった。途中きさらぎママが「チトセさん、何処へ行くんですか?」と声をかけてきたみたいだが、まるで耳に入ってなかった。



     6月の空は重く圧し掛かるような灰色に覆われ、雨は耐えず降り注ぎ、アスファルトが乾くことはない憂鬱な季節だった。
     目を覚ます度に雨の音が最初に耳に入った。気だるい感じの中、ようやく微熱も下がったうづきはベットから下りて、むつきが作った自家製ヨーグルトを食べに居間に向かった。ここ数週間はずっとチトセが深夜までうづきを寝かさず、睡眠不足の状態が日常化していたが、風邪のお陰とは変な言い方だが、久しぶりによく寝むれたような感じがした。ほんの少し心地良い気分だったが、居間に人の気配を感じた時、一気にそれが崩れ去る嫌な予感がした。
     居間のソファーには学校で授業を受けてるはずのチトセが座っていた。
    「なっ、ど、どうしたのチトセくん? 学校は?」
     チトセは立ち上がる。うづきの驚いた顔を見てにっこり微笑むチトセ。ただその微笑は悪魔のような卑猥な笑みだった。
    「学校なんて行ってらんないよ。今だったら二人きりでゆっくり過ごせるじゃん」
     チトセの目に危険を感じたうづきは咄嗟に一歩後ずさる。チトセはその手をぐっと捕まえた。
    「いやだよっ! 私は今風邪をひいてるんだよ! 今日くらい勘弁してよ!」
     うづきのその拒絶の言葉はすぐにチトセの唇で塞がれた。指は既にパジャマの下から直接肌を撫で回している。そのうづきの意思を無視し、当然のように身体を求めようとする態度が彼女には悲しかった。
    「他のママ達がいたら、できないこともあるし、ほんと今日はいい機会だよ」
     チトセはズボンのチャックから、自分のそそり勃つ肉棒を出して、見せ付けるように怯えるうづきの方に向ける。
    「愛してるよ、うづき」
     その言葉はうずきには呪いのようだった。
    (犯される!)
     歯がガチガチ震えた。恐怖とそしてそれと同等の悲しみで頭がおかしくなりそうだった。力いっぱい抵抗しようとしたが、チトセの腕力には敵わない。
    「愛してる」
    「ち、チトセくん! 今、自分がどんな顔をして言ってるのか解ってるの!?」
    「知らないよ」
    「や、や、やめて、よ。チトセくんは、む、息子なんだよ」
    「毎日毎日あんなことされて、まだそう思えるのかよ?」
    「思ってるよ!」
     悲鳴に近い言葉だった。
    「あ、あたしは! チトセくんのことを! 大切な! 大切な! 息子だと思ってるよ!」
     うづきは泣いて精一杯叫んだ。だが、ちとせはその彼女の悲痛な叫びを鼻で笑った。まるで子供のだだを見て失笑してるような相手を見下した態度だった。
     うづきの着ているパジャマのボタンを引き千切り、ブラも強引に取り外す。今までにないくらい力強く胸を揉んで乳首を摘み上げた。もう何も遠慮することなどなかった。
    「痛っ、や、やだ」
    「これでも息子だと思うか?」
     にやりと不敵に笑いながら言う。
    「息子だよ!」
    「俺にさんざんクンニされて、ケツの穴まで舐められて、何度もイかされて、顔にザーメンかけられて、今はこんなに乳首勃たせて、これでもまだそう思ってるのかよ?」
    「思ってるよ!」
     うづきが腕を振り上げた。(殴られる!) 一瞬そう思ったチトセだが、その腕はチトセの頭を包むように抱え込んだ。うづきはチトセの頭を自分の胸に押しこみ頭を撫でた。ママ達の誰もがする愛情表現だ。
    「チトセくんは、私の大切な、大切な、息子。大好き」
     『大好き』……その言葉が妙にチトセの胸に突き刺さる。何故だか衝動的に苛立ちが募り始める。
    「離せよ」
    「大好き」
    「離せよ!」
    「大好き!」
    「離せよ!!」
    「大好き!!」
     悲鳴に近いその言葉と共にうづきは力を入れてぎゅっとチトセを抱きしめた。抱きしめ続けた。
    「大好き、大好き、大すき、だいすき、だ、い、………」
     その力が抜けていき、しばらくして、ひっく、ひっく、という嗚咽がうづきから漏れた。
    「でも…………、今のチトセくんは………今の、チトセくんは………もう………もう大嫌い…」
     我慢出来ず、わあっとうづきが泣いた。彼女にとってその言葉は、この家との決別を意味するものだった。うづきの頭の中で走馬灯のように今までのみんなとの楽しかった日々がよぎる。
    (―――ここに来てどれくらいになるだろう? まるで遙な昔からこの家に住んでいたような気がする。みんなで笑いあい、励ましあい、悩みあい、―――そんな日々を過ごして、この先もそんな生活が続くと、続いて欲しいと、そう願っていた。ずっとこの空間にいたかった。ずっとみんなと笑いあっていたかった。チトセくんさえ息子に戻ってくれれば………。だけど………もう………もうダメなんだ)
     他のママ達の笑顔がずっと遠くに感じられた。
     自分だけが世界から見捨てられたような、いや世界を見捨てなくてはいけないような寂しさが彼女の心を襲う。
    「あたしのこと………、好きにしたいなら………そうすればいいよ。だけど、今日が最後だから。今日でおしまいだから。今日が終わったら、あたしはもう、ママをやめて、ただの先生になるから」
     うづきは全身から力を抜き、チトセの頭を抱いたまま横たわった。もう抵抗する気はないという意思表示だった。
     急に雨が大きく振り出した。その窓を打つ音が妙に静かに部屋に木霊する。嫌なくらいその音だけが響いていた。
     チトセは動かなかった。黙ってうづきの胸の中で凍りついたように微動だにしなかった。チトセ自信、何故か今どうしていいのか解らなくなっていた。
     雨のアスファルトを打つ冷たい音だけが淡々と響いている中でチトセは必死に思考する。
    (どうすればいい? どうしたらいい? 息子としても嫌われた。だけど、―――だけどうづきに嫌われることなんて―――最初から解りきっていたことだ。いや、とっくに俺は嫌われていた。だから今更何も気に病むことなんてない! 遠慮する必要なんてない! やりたいことをやればいいんだ! もともと何と罵倒されようと彼女を俺の気が済むまでめちゃくちゃにするはずだったんだから。だから犯るんだ! 今なら簡単に犯れる。他のママが帰ってくるまでたっぷり時間がある。うづきも無抵抗だ)
     チトセはうづきを見る。涙が溢れた目をきゅっと瞑って、漏れそうになる嗚咽を必死に息を殺して耐えようとしているうづき。
     今まではこういううづきの姿にさえもチトセは嗜虐的でサディスティックな興奮を得ていた。たっぷり力の差を見せ付け、押さえつけてから彼女の身体を貪るのを楽しんでいた。それが何故? 何故なんだ? 今のチトセの胸にはいつもの衝動がなかった。
    (動け! 動けよ!! 彼女はすぐ目の前だ。彼女の唇も胸もあそこも、全てが目の前だ。処女を奪うくらいなんでもない。ただ少しだけ、ほんの少しだけ腰を前に動かせば、俺のペニスをうづきのあそこに滑りこませることが出来る。そして気の済むまで陵辱すればいいだけだ。……………なのになんで!? なんで身体が動かない? なんで何もしようとしない? 前に進むんだ。振り返ったってもう何も残ってない。ここでやめて後に残るのは、ただうづきに嫌われたままで終わってしまった自分の抜け殻だけだ。そうならないように、せめてうづきの身体だけでも自分のものにする為に―――だから俺はこうして前に進もうとしてるんだ。だからヤらなきゃ。ヤらなきゃ!)
     その時―――
     部屋のドアが開いた。そこには―――、学校で教鞭をとってるはずのきさらぎママの姿があった。



     半裸で涙目になっているうづきと、その上に乗っているチトセ。その光景を見てもきさらぎママは特に驚いたような表情はしていなかった。ただ静かにチトセ達を見つめていた。無言のまま時が流れる。それは数秒だったかもしれないし、数分だったかもしれないが、チトセにはその時間が妙に息苦しく長いものに感じた。
     ふいにうづきが上体を起こす。それまで瞳の淵に溜まっていた涙がぽたぽたと流れ落ちた。うづきは床に散乱している自分の衣類を拾い集めて立ち上がり、黙って部屋を出ていった。ドアを潜る途中できさらぎママと肩がぶつかったが、うつむいたまま何も言わなかった。
     ドアが反動で閉まる瞬間、咄嗟に、
    「うず…」
     チトセが顔をあげてそう言いかけた時、
    「追っては、いけません」
     きさらぎママがチトセの言葉をさえぎった。珍しく感情の篭った重く圧し掛かるような言葉だった。事実その言葉でチトセは起こしかけた身体の動きを止めてしまった。きさらぎママが続ける。
    「今日は、チトセさんが黙って学校を早退したと聞いて、不安を感じたので、私も早目に帰って来ました。そして、私のその悪い予感は的中しました。正直、部屋に入るべきかは迷いましたが、チトセさんもやり場のない矛先を、もう何処に向けていいのか解らない状態で、苦しそうにしていましたし、うづきさんも ―――これ以上彼女を傷付く姿は見たくなかったから」
     彼女が何気ない動作でテーブルにあるリモコンを拾い上げ、スイッチを押した。特に意味のある行動とは思わなかったが、テレビに映し出されたのは、監視カメラの再生映像で、それにはちょうどこの居間が映っていて、そして―――
    『なっ、ど、どうしたのチトセくん? 学校は?』
     それはさっきまでのチトセがうづきをレイプしようとした時の醜態が映っていた。きさらぎママの隠しカメラで一部始終撮られていたらしい。チトセは自分の身体から血の気がひくのを感じた。
    「な、なんだよこれは!? 盗撮なんてしてたのか!? いくらなんでも、こんなところを撮ってたなんてきさらぎママは何を考えているんだ!? もしかしてこうやって、ずっと前からうづきと俺の関係を見ていたのか!?」
     気不味さを誤魔化す為きさらぎママを責めるように怒鳴った。そうでもしないとチトセ自分が罪悪感で潰れてしまいそうだった。
    「盗撮ではありません。毎日、出かける前に、対泥棒用に仕掛けているカメラです。今日はうづきさんがいたのに、ついいつもの癖でタイマーを、オンにしてしまっただけです。それから、今までのうづきさんとの毎晩のことは、知っていましたが、見てたわけじゃ、ありません。いやでも、聞こえていたんです。屋根裏部屋には、小さな音でも、響いてしまう、ので」
     彼女はリモコンをテーブルに戻すと、ゆっくり目を瞑る。そして、チトセの方に向き直る。
    「チトセさん、大事な話が、あります」
     あまり表情を表に出さない彼女であり、今も相変わらずの無表情だが、彼女のその身体からは固い決心を匂わせるような雰囲気があった。そして、―――そして何故かきさらぎママは胸のネクタイをするっと外して、自分の着ている服を――― 一枚一枚脱ぎさっていった。彼女のあまりに突飛な行動にチトセは慌てて立ち上がる。
    「ちょ、ちょっとどうしたんだきさらぎママ!?」
     チトセのその言葉には何も答えず、きさらぎママは下着をも脱ぎ去り一糸纏わぬ姿となった。綺麗なウエスト。予想より大きな胸。髪の色と同じ薄い恥毛と下に覗く陰部。チトセはそれから目を離すことができなかった。うづきのような健康美を含んだ魅力はないが、豊満な曲線とどこかしら儚さを持つきさらぎママも充分すぎるほどに魅力的だった。その彼女が今、チトセのほんの目の前で裸体を晒しているのだ。彼女は顔を赤らめて横を向いている。うづきとは違う女の香りにチトセの心臓はバクバクして破裂しそうだった。むしゃぶりつきたくなる衝動を堪えて、なんとか平静を保とうとする。
    「な、な、なんの―――なんのつもりだよきさらぎママ!」
    「うづきさんはあなたの恋人にはなれませんでしたね」
     唐突に出たその言葉に、チトセは何かを言い返そうとし、口だけは開いたが、その後に続く言葉は何もなかった。ようやく、
    「そ、それと、今のきさらぎママの行動に、何の関係があるんだ!?」
    「あります」
     きさらぎママは手をゆっくりとチトセの頬にもっていく。そしてそっとチトセの輪郭をなぞるように優しくその頬を撫でた。
    「私は、―――私は、チトセさんの息子にも、恋人にも、なってあげられます。私じゃ、ダメ、ですか?」
     あまりに突然のきさらぎママの申し出。
    (息子にも恋人にも……!?)
     一瞬、チトセの思考が凍りついたように止まった。その言葉の意味の全てを飲み込むのに時間がかかった。
    (………きさらぎママはうづきと俺との関係も、俺がどんな奴かも知っている。それをこの状況で、―――しかも全裸でそんな申し出をすることがどんな意味を指すのか―――)
     すぐ目の前で官能的な美しい姿になったきさらぎママを見た。悩ましい姿に頭がくらくらする。乳首を指で摘み上げたい。抱きしめて太股やお尻の肉の感触を楽しみたい。下腹部の肉芽を俺の好きなクンニで舐めまわしきさらぎママの反応を確かめたい。―――淫らな行為の数々がチトセの頭によぎる。同時にうづきの顔も脳裏にちらついた。
    「私を愛して、くれますか?」
     再度きさらぎママが言う。
     ごくん、と喉が鳴る。もう1秒も待ってられない。すさまじい期待感と歓喜で喉がひっくり返るくらい興奮していた。きさらぎママの身体に触れたくて触れたくてうずうずし、その我慢が限界寸前だった。
    (きさらぎママ、俺、きさらぎママのことを愛して――)
     そう言おうとした瞬間だった。
    『愛してるよ、うづき』
     偶然のタイミングだろうか? テレビではずっと先ほどのチトセとうづきの映像が流れていた。そしてその中のチトセの声が、今の自分の心の声と重なった。はっとして画面に目をやると………
    『今、自分がどんな顔をして言ってるのか解ってるの!?』
     うづきが泣きそうな声で叫んでいた。
    『知らないよ』
     そして自分が冷たく言い放つ。
    (どんな顔をしてるのか………) チトセはその言葉のあと画面に映った自分を見て――――絶句した!
     自分の姿でありながら直視できなかった。テレビの中のチトセは、泣き叫んで抵抗するうづきをまるでモノとしか思っていないような見下した目と、残酷な悪魔のような笑いをしていた。あまりに醜い、―――自分の姿。
    (………俺は今まで、こんな顔をして、うづきに「愛してる」って言葉を繰り返していたのか?)
     愕然とした表情で、チトセはきさらぎママを見る。
    「チトセさんは、今もそういう顔、してましたよ」
     きさらぎママの目はチトセを憐れむようだった。その目はチトセに抱かれていた時のうづきと同じ目をしていた。
    「私を、愛してくれますか?」
     チトセはきさらぎママの顔をまともに見れなかった。まるで恥ずかしいことを全て見透かされた子供のようだった。
     チトセは咄嗟に床にある彼女のブラウスをとって着せた。きさらぎママは両手を胸で交差させてそのブラウスの端を掴む。
     気分が悪くて眩暈がした。テレビの画面はもう見ていられなかった。電源を切って、ソファーに腰を下ろす。嘔吐感を催すほどだった。
    「ごめん、きさらぎママ」
     なんとかそれだけを口にする。刹那的に脳裏に映るあの時の自分の顔をなんとか振り払おうとしたが、トラウマのようにこびり付いたそれはチトセの脳内から消えることはなかった。
     肩が震えていた。時々泣きべそをかく子供のように震える呼吸で鼻をすすった。自分がはがゆくて、歯をぎりぎりいわせながら目を瞑る。大粒の涙が溢れた。手で顔を覆って何度も押し殺すかのような痛い息をつく。
    (―――そうだ。解っていた、本当は解っていたんだ。なんでうづきがあれほどまでに俺を恋人として愛そうとしなかったか。俺は自分のことしか考えてなかった。彼女の意思なんて何も考えず、そして貪欲に自分の都合の良いように彼女の肉体を貪ることだけを考えていたからだ。彼女に届くはずのない、性欲だけを剥き出しにした「愛している」という言葉を繰り返し、まるでその言葉さえ吐いてれば自分の卑劣な行動が正当化できるかのような都合のいい暗示で自分を誤魔化しながら。俺は「愛してる」という言葉に酔っていたのかもしれない。最初は彼女の身体を好きにする言い訳に過ぎなかったけど、だけど俺は本当に彼女を好きになっていて―――)
     人との繋がりを持った時、人は弱く脆いものになってしまう。そんな話を昔聞いたのを思い出した。一度手にしたものを手放すのは悲しいが、特に愛情や人のぬくもりというものは、本人に恐ろしいくらいの執着心を残し、失った時はその深さの分、心をえぐり取るかのような痛み与えてしまう。
    (うづきママのぬくもりを知った俺は、それを失うのが怖かった。どんなことをしてでも離したくなかった。そんな勝手で一方的な想いを、俺はそれがうづきも受け入れるべきの本当の愛だと勘違いしていたんだ。俺が執着したのはうづきの優しさや愛情ではなく、その肉体だったのに。彼女にはそんな俺はどう映っただろう? 今なら解る。彼女が言った「自分が今どんな顔をして言ってるのか解ってるの!?」という悲痛な叫びの重さが。どれだけ俺がうづきにとって残酷な奴だったかということが。そしてそれがこんな結果を生んでしまったということが)
     悔やんでも悔やみきれないくらいの後悔が胸に重い空気となって圧し掛かり、押し潰されるようだった。
    『大好き』
     ふとうづきの声が頭の中に響いた。その言葉を聞くことはもうないのだろうか? それを思うと大きな喪失感がチトセを襲った。
    『大好き』
    (やっと気付いたのに。自分の愚かさ。そして、どれだけ彼女が俺を好きで、そのために苦しい想いをしたかということに。やっと気付いたのに。それはもう遅いのだろうか?)
     顔を覆っていた手をゆっくり下ろす。
    「うづきは、―――どこに行ったんだろう?」
     つぶやくようにその言葉が漏れた。
    (会わなくちゃ。会って謝らなきゃ。それで許してくれなくても、別れることになっても、とにかく謝らなきゃ)
     そう思って顔をあげると、きさらぎママが中腰になってチトセの顔をすぐ間近で見つめていた。
    「チトセさん。先ほどよりもいい顔になってますよ。ずっと、ずっと」
     彼女の言葉にはいつも嘘はない。だからチトセはその言葉を心地好く受け止めた。
    「彼女を追いますか?」
    「ああ」
     きさらぎママがチトセの前にゆっくりと正座する。そしてチトセの顔を下から覗きこむ。ほんの僅かだが少しだけ笑みのある顔だった。
    「なら、迷える生徒を導く教師としての立場から、あなたに言わなければならないことがあります。あなたくらいの年の男の子は性欲衝動の対象をそのまま愛だと錯覚してしまうのはよくあることです。少しでもセックスができそうな身近な女性への願望がそのまま本人にとっては本当の恋だと勘違いしてしまうものです。若い男の子にとっては溢れんばかりに湧きあがる性欲を押さえるため、苦しい思いをしなければならないことは解ってます。仕方ないことかもしれません。だけど、本当に好きな女性にはやっぱり愛は必要なんです。そう、チトセさんの場合、うづきさんがチトセさんを想う強さの分だけ愛が必要なんです。じゃないと二人の心の天秤は決して釣り合うことはないのだから、いつかどちらかが悲しい想いをしてしまう。彼女は身体はあなたの自由にさせたけど、それでも処女を与えようとはしなかった。もし全てをあのような状況のまま許してしまえば、あなたはそのうち彼女を、ただの自分の都合の良い性欲消化のための存在としか見ないようになったかもしれません。ある程度の欲望を満たしてしまえば彼女に飽きて簡単に捨ててしまったかもしれません。だから彼女はかたくなにチトセさんを拒んだ。それは彼女があなたにも自分と同じ想いで私を見て欲しいという心の顕れでもあったんですよ」
     きさらぎママの目はまっすぐチトセを見ていた。
    「今、聞いていいですか? あなたはうづきさんを愛していますか? またそれはどんな愛ですか?」
     チトセは少しだけ照れたふうに笑った。
    「愛してる。―――ってなんて安易で都合のいい言葉だったと今では思う。まだ心が少し混乱しているけど、俺は今、うづきに一番会いたいって思ってる。そしてやり直せるなら―――うづきが許してくれるなら、『うづきが好きな俺』をもう一度取り戻すから―――、なんだってしても頑張って取り戻すから、だから、うづきは俺の傍にずっといてほしいって思う」
    「それで、いいですよ」
     チトセは一度目を瞑り、大きく深呼吸する。心は少し落ち着いた。
    「ありがとう、きさらぎママ。それを身体を張って俺に気付かせてくれて……」
     チトセはドアに向かって走る。一瞬きさらぎママの白い太股に目がいってしまい、なんとか邪念を振り払う。
    「でもちょっと残念だったな。きさらぎママが抱けなくて」
     軽い冗談だったが、彼女の「私も、少し、残念です」という言葉で、足が滑りそうになった。彼女のこういう答えだけはいつも本気だか冗談だか解らない。



     雨はスコールのような激しさで降り落ちていた。
     逃げるように外に出たうづきは、近くの公園の屋根付きの小さな休憩場のベンチに座っていた。
     髪も服も水分を吸い、重く肌に圧し掛かる。それはそのまま心を締めつけるようだった。
     もう夕方になるのだろうか? 雨のせいか、いつもより辺りが暗く見えた。当然公園には遊んでいる子供は誰もいない。まるで自分だけが帰りそこねた子供になったような気がした。
    (あたしに、帰る家はあるのかな…………。あたし、もうあの家には戻れないのかな………)
     ぎゅっと掌に力を込める。我慢しよう、我慢しようと思ったけど、涙腺は全くいうことをきいてくれず、涙が溢れ続けた。
    (あたしは、何か間違っていたのかな? あたしだってチトセくんが好きだ。大好きだ。将来恋人に、そしてチトセくんの子供のママになってもいいとさえ思ってた。だけどあんな形で押し倒されて無理矢理身体を好きにされて―――あんな目で「愛してる」って言わなくても………。残酷だよ。ほんとにチトセくんが好きだったのに………残酷すぎるよ………)
     ちょっと前の関係を結ぶ前のチトセを思い出す。意地っ張りで憎まれ口ばっかり言って………、でもほんとは照れ屋でママ達の我侭も聞いてくれて、優しくて………。そんなチトセが大好きだったのに………
    (もっと違う形で愛して欲しかった。もっと優しく愛して欲しかった。もっと私のことを大切にして欲しかった…………、なのに最後は、気に入らない人形でも壊すかのように………)
     病み上がりのうづきに対してなんの遠慮もせず、力ずくで押さえ込もうとしたチトセ。それを思い出すだけで悲しさで呼吸ができないくらい喉が震えた。鼻をすすりながら、重い憂鬱な色の雲に覆われた空を見上げ、チトセの家があるあたりを見つめてしまう。
    (もうあの家には戻れないんだ。あたしがいたらもっとチトセくんが壊れてしまう。だから、もうあたしがいてはいけないんだ………)
     雨の音が大きくなり耳を塞ぐようだった。
     その時、かすかに、この雨の中を必死に人が走っている音が聞こえた。何故だろう? 本能的に「チトセくんだ!」と思ったうづきは、身を屈めて上体を隠した。どんな顔をして会えばいいか―――、いや、チトセがどんな顔をしているのか、―――どちらにせよ今は正気を保っていられる自身がなくて、それが怖くなったからだ。水を蹴る足音が大きくなる。その足音は―――やはりチトセだった。
     チトセは公園にちらりと視線をやったが、うづきには気付かずそのまま走り去る。
    (チトセくん―――あたしを探してるの?)
     心臓がトクンと鳴った。
     一瞬しか見えなかったが、チトセの顔は、昔の―――大好きなチトセの顔だった。



     チトセは雨の中を構わずひたすら走った。
     雨が降ってるから屋外の確率は低いと判断し、学校、図書館、彼女の好きな本屋、ゲームショップと、とにかく思いつくままに走った。
     思った以上に寒い。雨の粒も大きく、密度も高く、まさに文字通りどしゃぶり状態で、身体を叩きつけるようだった。まるで着たままプールにでも飛び込んだかのように水を吸ったGパンが重くて不快だった。あまりにがむしゃらに走ったせいで酷く疲れていた。それでも1秒でも早くうづきに会いたくて気がせいた。
     雲の上にある太陽は一度もその顔を覗かせることなく地平線に消え去ってしまい、僅かな時間の夕暮れ時はあっという間に夜の闇へと変わった。常夜灯が灯り、街のネオンが色をつけ始める。何時間走り続けたか、もうチトセにも解らなかった。ひたすら、(あそこの角を曲がればきっと!?)、(この店のどこかにこそ!?)と願いながらうづきの姿を探し続けたが、その望みは叶わなかった。まるでうづきの幻影を追っているかのような錯覚に捕らわれた。髪はもう雨と汗でぐちゃぐちゃ、膝もガタガタで何度ももつれて転んだ。端からみたら恐らく酷い格好をしているだろう。ぜいぜいと肩で息をしてそれでも走る。夜の闇の中でチトセは自分の意識も暗くなってきているのを感じた。体力が限界で意識が何度も途切れて、ついには電柱にもたれかかるようにして倒れた。途端に雨が氷のように冷たく感じた。
    (どこに行ったんだ………うづき………ママ……)
     いつの間にかまた「うづきママ」と呼んでいた。自分があれだけのことをしても、最後まで自分のことを「好き」だと言ってくれた。「息子」だと言ってくれたうづきママ。彼女の気持ちを考えると、本当にうづきママに会いたくてたまらなかった。(走らなきゃ―――) 震える膝を腕で押しながら、何とか電柱にしがみつき立ち上がろうとする。意識が朦朧としている。一瞬その意識が途絶え、深い無意識の底に落ちようとした瞬間だった。
    (パパ、ママ……)
     チトセははっとした。泣いてる子供の声がした。なんの声だ? 妙に聞き覚えのある声だった。チトセは考える。いつかどこかで聞いた声。―――それはチトセの心の中から聞こえていた。
    (どこにいったのパパ、ママ……なんで、どこにも、いないの? ひとりにしないでよ)
     チトセは気付いた。そして衝撃を受けた。その声は自分自信の遠い昔の、―――子供だった頃の声だった。
     デジャブーなのか? 小さい時、こんなふうに街をさまよったことがあったっけ? ………何処にもいない、いるはずもない両親を探して。
    (………ママ、ママ)
     いつも俺の頭を撫でてくれた優しいうづきママ。うづき、ママ。………うづき……ママ。
     頭の中で幾度もよみがえる、うづきママの姿。いつも朝無邪気に笑って起こしてくれるうづきママ。ソファの横に「よいしょっ」とふわりと座ってチトセの袖を「遊ぼう遊ぼう」と引っ張るうづきママ。寂しくなった時いつもそれを察してくれて後ろからジャンプして俺に抱き付いてくれるうづきママ。本当に無防備なくらい優しさを、愛情を俺に注いでくれたうづきママ。
     そして、最後の、あの悲しい絶望したような瞳。
     涙が出た。熱い熱い涙が頬を流れ続けた。
    (俺は馬鹿だ。日本一の、世界一の大馬鹿野郎だ。ほんとは、この世で一番幸せな奴かもしれなかったのに、自分の欲望の為に、それをむちゃくちゃにしたんだ)
    「ママ、うづきママ、うづきママ、うづきママ、うづきママ」
     声に出して何度もそう繰り返した。心の中で泣いている過去の自分の声も同じ声をあげて泣いていた。
    (ママ、なんでかえってこないの? なんでむかえにきてくれないの? ママ、どこにいったの?)
     涙で歪む視界。疲れて上がらない足。何処を走っているのかも解らずただわんわん泣きながら街をさ迷った遠い日の自分。何もかも今と同じような気がした。
     だけれども――――。
     チトセは少しだけ笑った。雨は僅かに和らいでいた。
    (―――今は子供の時と同じじゃない。あの時は、俺の探す人はこの地上の何処にもいない人だったんだ。だけれど今は違う。俺の探す、うづきママはちゃんといるんだ。この世界にいる人なんだ。探せば、絶対、この地上の何処かに。何もかもに絶望したあの頃と同じではない!)
     気持ちはほんの少し楽になったような気がした。
     立ち上がって、呼吸を整える。そしてまた走りだす。
    (そうだ、探せば必ずいる人なんだ。この手で抱きしめられる人なんだ)



     何処をどう走ったのか? もう記憶が混乱していて既に解らなくなっていたが、チトセは自宅の前に辿りついていた。街中を探し回った。それでもうづきママはいなかった。だとすれば―――。不安と期待が入り混じる。ただどちらも大きすぎて胸が潰れそうだった。最後の望み。それが我が家だった。
     酷く息を乱しながら、中庭の向こうに見える居間に目をやる。今は何時か解らないが、もう深夜といっていい時間だろう。居間には明りがついている。うづきママは、帰っているのだろうか? 門をくぐろうとした時、ドアが開いて、そこには―――うづきママがいた。
     チトセが走る。
     ふらふらだった。
     玄関の踏み石に足が滑った。ぐらりとバランスが崩れてチトセは瞬間(倒れる!) と思った時―――
     うづきママが―――、チトセを抱きしめていた。
     ぎゅっと、夢中で、身体中の力を全て出すかのように、力を込めて。
    「こんな時間まで何処行ってたのよチトセくん! 心配しちゃったじゃないの!」
     うづきママの声、匂い、感触。そして彼女の持つ優しい空気がチトセを包んだ。今までのようなチトセを警戒してるような感じは少しもなく、本気で帰らないチトセを心配していたみたいだった。
    「おかえり、うづき……ママ」
    「ちょ、何言ってるのよ? 帰って来たのは…」
     うづきママは、またチトセが自分をママと呼んでいることに気付いた。
    「帰って来たのは、チトセくんの方だよ」
     いろんな意味が含まれてる言葉だった。うづきママはチトセに優しく頬擦りをしながら言った。
    「私の大好きなチトセくん」
     彼女はチトセの頭を撫でる。チトセはうづきママに身を任せた。ずっと、ずっと、ずっと、そうしていた。やんわりと聞こえる雨の音が、何故か胸のつっかえを優しく流していってくれてるような、そういう感じだった。チトセは意識がゆっくりと落ちていくのを感じた。そして思った。
    (次に目を覚ました時、彼女は俺の傍にいるだろうか?)



     夜、チトセはうづきママの部屋にいた。ベットの上で余程疲れたのかすーすーと静かな息を立てて眠っていた。
     久しぶりにするチトセの添い寝だった。キスもしなかったし、身体を触ろうともしなかった。ただ彼女の腕の中で黙って眠っていた。
     その寝顔を見てうづきママは思った。
    (今度は愛せる。息子としてだけじゃなく、恋人としても)
     静寂の中で、夏の虫の声だけが辺りを包んでいた。雨はとっくにやんでいる。
     梅雨はもうすぐ明けるだろう。

     いつか不安に感じたものなんて、もう何もなかった。



    ~終~    




    #あとがき

     2chの半角パロディ向けに書いたものです。久しぶりにSSなんて書いた。しかし、気軽なノリで書き始めたせいか、のっけから迷走が始まってしまい、自分自信起承転結の手応えも得られないまま、「ま、いいや」って感じで最後まで突っ走りました。もう後半(とくにきさらぎママ登場あたりから)ぐだぐだになってましたね。なんか途中から早く書き終わらせなきゃって感じの強迫観念に駆られたような感じで(苦笑)
    ただ今回のSSでうづきの扱いが酷いと感じた方(またはチトセの性格悪すぎ! と感じた方)、本当に申し訳ないです。

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  1. 閑古鳥の巣 2003/09/16(火) 22:52:36
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