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Pure……(2)

  1. 名無しさん@閑古鳥 2003/12/05(金) 15:20:00
    782 名前:678 『Pure……(2)』1/7[sage] 投稿日:03/12/05(金) 15:20 ID:cxUV8n41
    ----------------------------------------------------------------
    街でもっとも高い魔術師の塔。

    塔の屋上にてある日、見習いの少年が寝転んでいた。
    そして少年は、はるかなる上空に、天駆ける天女の姿を認める。
    だがその姿は、わずか豆粒の半分ばかりであった。

    師より授けられたばかりの命の次に大切な杖。
    少年は、その杖を一振りした。
    ----------------------------------------------------------------

    783 名前:『Pure……(2)』2/7[sage] 投稿日:03/12/05(金) 15:22 ID:cxUV8n41
    バスルームの床は一面に濡れていた。
    それも道理だろう。なにせ、先程までむつき自身が懸命に掃除していたのだから。
    仁歳家のバスルームは結構な広さがある。
    鏡やシャワーなど設備も充実しており、タイルもしばらく空き家だったとは思えないほど綺麗だ。
    家主のチトセは『洗えればどこでも同じ』と素っ気ない。だが、むつきはこのバスルームがお気に入りの部屋の1つだった。
    おかげで、必要以上に掃除に気合が入りすぎる事もあったりするが。
    「きゃ……!?」
    そのバスルームの入り口で、どん、と背中を押された。
    濡れたタイルに足を取られ、危うく転びそうになる。
    それでも、かろうじて奥の壁に手をつき、身体を支えて難を逃れた。
    「ちょ、ちょっと……いきなり何するんですか!」
    抗議の声を上げるむつき。
    しかし返答のないまま、ぴしゃんとガラス戸は閉じられた。

    784 名前:『Pure……(2)』3/7[sage] 投稿日:03/12/05(金) 15:23 ID:cxUV8n41
    実際、むつきの感覚では十分にいきなりの出来事だった。
    チトセは不意をついて彼女をこのバスルームまで引きずり、そのまま押し込めてしまったのである。
    素足でよかった、と場違いな感想が頭に浮かぶ。もし水仕事に備えてストッキングを脱いでいなかったら、足元が悲惨な事態になっていたに違いない。
    そう言えば、洗濯カゴも落としてひっくり返してしまった。床を汚すような洗濯物はなかったと思うが、大丈夫だろうか……。
    「よお、お待たせ」
    むつきの思考は、再び戸が開きチトセが入って来た事で中断された。
    「チトセさん!? これはどういう……」
    「さあ、どういう事だろーな」
    むつきは逆上し、声を荒らげて食ってかかった。
    が、チトセはすっと身をかわすと、素早く彼女の右手首を押さえ込む。

    785 名前:『Pure……(2)』4/7[sage] 投稿日:03/12/05(金) 15:24 ID:cxUV8n41
    「……ひやっ!?」
    背筋が一瞬凍りつき、喉から素っ頓狂な声が漏れた。
    冷たく、ぬるりとした右手の感触。
    見るとそれは、白いクリームのような物体であった。チトセがクリームを、手の甲に塗りつけたのだ。
    その時になってむつきは、チトセのパジャマのポケットから1つの大きなチューブが顔を覗かせているのに気がついた。
    チューブにはラベルもついておらず、その正体を示す手がかりは見当たらない。
    「い、いや……!」
    未知の存在に対する本能的な恐怖。
    思考回路より先に、反射神経がむつきの身体を突き動かした。これ以上変なモノを塗られてはたまらないと、右手を引っ込めようとする。

    786 名前:『Pure……(2)』5/7[sage] 投稿日:03/12/05(金) 15:25 ID:cxUV8n41
    だが残念ながら、むつきの腕力は、彼女の手を押さえ込んでいるチトセの力ほど強くはなかった。
    「……きゃっ!?」
    がくんとバランスが崩れる。
    チトセの拘束を振り払う目的は果たせなかった。どころか、踏み込んだ足は濡れて滑るバスルームの床を捕らえ損ねてしまう。
    遊園地でフリーフォールに乗った時のような、不思議な感覚。
    「危ねぇ、むつきママ!」
    その感覚を断ち切ったのは、チトセの叫び声だった。
    まるで命綱を着けていたかのように、胸部がぐいっと引き上げられる。
    そして、背中が熱い壁のようなモノに叩きつけられる感触。
    ――転びそうになってチトセに抱き留められた、と気づくまでに、むつきは数秒の時間を要した。

    787 名前:『Pure……(2)』6/7[sage] 投稿日:03/12/05(金) 15:26 ID:cxUV8n41
    「……あ……ありがとう、ございます」
    「ったく、世話焼かせてくれるぜ」
    ぶっきらぼうな、しかしどこか温かみを感じさせるチトセの声。
    もしもむつきの背中側にも目がついていたなら、彼がそっぽを向いて吐き捨てた様子を確認できただろう。
    その両腕は、バストのふくらみを押し潰すかのように、ぎゅうっとむつきの胸部を締め上げていた。
    右手もあっさり自由を取り戻している。これも怪我の功名と言うべきか。
    チトセの身体に寄りかかった体勢から、おずおずと足の裏でタイルを確かめてみる。
    (あ……なんだか、クララにでもなったみたい)
    益体もない想像に、思わず苦笑してしまう。
    それでも、ぐっと踏みしめると、むつきの身体は今度こそバランス取りに成功していた。再び自分の足で立ててほっと一息をつく。
    しかし、チトセはなおも、彼女の身体を離そうとしなかった。

    788 名前:『Pure……(2)』7/7[sage] 投稿日:03/12/05(金) 15:27 ID:cxUV8n41
    ドレスの薄い布地を通じて、胸板からじわじわと伝わって来る体温。
    それはむつきにとって不快な感触ではなかった。だが、不快でない分かえって、意識がどうしてもそちらに向いてしまう。
    とくん、とくんと少しづつ心臓の動きが早まっていく。
    鼓動がチトセの腕に伝わり、動揺を彼に気づかれてしまわないだろうか……?
    「あ、あの……チトセさん?」
    不審をいだいたむつきは振り返ろうとした。
    彼女としては『そろそろ離して欲しい』と言おうとしていたのだろう。
    しかしながらその時――そんなむつきの意志を覆い隠すかのように、ささやき声がほんのわずか、彼女の鼓膜を揺り動かした。
    「すごく柔らかいな、今日も……それにいい匂いだぜ」
    かすかでありながら同時に決定的な力を秘めた言葉。
    それはあたかも、魔法の呪文のようであった。
    「なあ――『むつき』は」
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